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房州びわと山の幸 福原農園の農業日誌

房州びわと山の幸 福原農園の農業日誌

福原農園の房州びわの歴史と栽培方法

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収穫直前の房州びわ
収穫直前の房州びわ posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園

房州びわの歴史
 びわはもともと日本各地に自生していた植物です。びわの歴史自体は古いのですが、日本の在来種は実が小さく、鎌倉時代までは、栽培に利用されたという記録はほとんど残っていません。しかし、鎌倉時代から江戸時代までこの在来種の栽培記録が残っており、富浦町でも江戸時代(1751年)には栽培が行われていたという記録が残っています。それ以降、品種の改良が試みられたようですが、大きい実のものができず、本格的な栽培には至りませんでした。
江戸時代後期から明治時代にかけて、長崎経由で中国から様々なものが入ってきました。この中にびわの果実もあり、「唐びわ」と呼ばれ取り引きされていたようです。現在のびわの品種のもとになっている「茂木」、「田中」もこのときに日本に入ってきました。その後、日本各地でびわの栽培が本格的に始まりましたが、九州地方では「茂木」を中心とした産地が発展し、その他の地方では「田中」を中心とした産地が発展していきました。富浦でも1900年頃、「田中」を導入し、栽培が本格的にスタートしました。この時を房州びわの栽培の始まりとすると、房州びわの栽培の歴史は100年ほどであるということができると思います。それ以降、「田中」は長く房州びわの主力品種でした。最近は「大房」の勢いにだいぶ押されている感じですが、その「大房」も「田中」と「楠」を交配してできた品種です。「田中」を知らずに房州びわは語れない、と言えるほどに大事な品種ですが、がんしゅ病に対する耐性の問題やお客様の味の嗜好の変化の影響で、富浦では主役の座を「大房」に奪われてしまいました。現在では、露地の房州びわのほとんどが「大房」です。
 1975年あたりからびわをハウスで作る試みが行われ、現在では富浦にはたくさんのびわ用ハウスが建てられるまでになりました。ハウスにあったびわの品種が開発されたこと、品種にあった栽培方法が確立したことで、今では、6月だけでなく5月も、おいしいびわが食べられるようになってきています。
 また、数年前から種なしのびわが市場に出るようになりました。染色体の数が通常の倍ある4倍体のびわと通常の2倍体のびわを掛け合わせてつくった3倍体のびわは種をつくることができません。種から作られる植物ホルモンを人工的に補って果肉を成長させると種なしのびわになります。原理的には種なしスイカと同じです。栽培方法も次第に確立してきており、味も年々よくなってきているようです。まだ栽培農家が少なく、入手は困難ですが、価格も最初と比べると下がってきているので、だんだん手に入りやすくなっていくのではないでしょうか。しかし、今のところは栽培農家と直接交渉しても手に入るかわからないという、まさに「幻のびわ」です。
種なしびわと普通のびわの比較
種なしびわと普通のびわの比較 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園

房州びわの栽培方法

整枝
びわの枝の誘引
びわの枝の誘引 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
びわの木は成長が早く、放任すると樹高10m以上にもなります。また、品種によって成長の仕方が異なるので、作業性、収量を考え、それに合わせた仕立て法が考えられています。びわは木が若いうちは比較的自由に樹形を変えることができるので、今後も様々な整枝法が考えられてくると思われます。変則主幹形、2~3段盃状形、低樹高仕立てなどがありますが、いずれの方法でも、車枝状に伸長する枝の処理とその芯止めの時期、枝の密度などには十分留意しなければなりません。<また、枝を伸ばす空間に制限があるハウス栽培の場合は、個々の枝を下に誘引することも、とても大事な作業です主な房州びわの整枝方法を下に紹介します。

・変則主幹形
 びわの自然の樹形は変則形です。放任すれば芯がまっすぐに上に伸び、これをとりまくように枝が分岐してきます。この分岐する枝を50cm間隔で120度ずつずらしながら各方向に主枝として配置し、芯を止めると変則主幹形になります。昔からある仕立て方で、びわ以外の果樹にも使われています。びわでは主に直立性の樹形をもつ品種の整枝法として使われています。

・2~3段盃状形 
びわは枝の分岐が車枝状になることを利用した整枝法です。盃状形を2~3段重ねた形です。それぞれの段に3本の主枝を配置します。それぞれの段の間を90cm前後にし、それぞれの主枝の上の空間を確保し、木全体光があたるようにつくる整枝法です。「田中」などの開帳性の樹形をもつ品種に向いていると言われています。

・低樹高仕立て
 2段盃状形をさらにコンパクトにした形です。主枝の間隔、あるいは段の間隔をせばめて樹高を2m前後に抑えます。放任しておくと枝が上に伸びていくので強制的に誘引します。作業性がよく、若い木でも花つきがよくなるため、初期収量が高くなります。しかし、大きくなる木を小さく作り変えるため、樹勢が弱くなりやすく、施肥管理には十分に気を配る必要があります。

剪定
びわの剪定
びわの剪定 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
 希望の形に整枝した期はその形と大きさを維持する必要があります。樹冠外周部の拡大部分を切り戻すこと、樹冠内の個々の枝に日が当たるように枝をまばらにすることを重点に考えて枝を切っていきます。剪定の時期は花芽分化が終わった8月下旬から9月下旬ころです。樹形を維持するために、樹頂部の枝を整理し、内部まで日が当たるようにします。主枝は下のものほど勢力が強いことが理想なので、上部の主枝の先端が下部の主枝の先端より先に出ないようにします。また、密生枝の間引き、徒長枝、下垂枝、軟弱枝の整理をして、枝と枝の間の空間を確保します。また、実がつく部分が枝の先端に多くなってしまったような結果枝は作業性が悪いので、切り詰めます。また、がんしゅ病が入ったり、キクイムシにやられたりして、枯れてきた枝は、そのままにしておくと木全体が弱くなってしまうので、枝のもとから切ります。切り口からがんしゅ病が入ることもあるので、切り口にセメダインやトップジンエムなどの殺菌剤を塗ったりします。木の下の地面に木漏れ日が当たるくらいまで枝を整理します。

施肥
生ごみボカシ投入後のびわの苗木
生ごみボカシ投入後のびわの苗木 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
 びわの木の養分保有率を調べてみると、石灰が一番多く、次いで窒素、カリ、マグネシウム、リン酸の順になっています。びわが最もよく生育するのはpH5.5~6.0と言われており、土壌改良剤としても石灰が使用されます。びわの木には細かい根が少ないため、一度に多くの肥料を吸収できません。そのため、回数を分けて肥料を与える必要があります。びわ専用肥料の配合は、一例として、菜種粕270kg魚粕200kg、骨粉150kg、鶏糞80kg、硫安200kg、過リン酸石灰45kg、硫酸カリ55kgとなっています。8月下旬から9月に基肥を与えます。施肥量は全体の50%ほどです。花芽が伸長する時期なので、これにより開花結実の養分補給を行います。1~2月に追肥をします。果実の肥大を助ける目的で、30%ほど与えます。残りの20%を夏に与えます。これは収穫後、速やかに樹勢を回復させるのが目的です。

花もぎ(摘蕾、摘花)
摘花直後の房州びわの花芽
摘花直後の房州びわの花芽 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
 びわは放任すればたくさんの花をつけ、大量の実をつけます。そうすると個々の実が小さくなってしまいます。その場合、実に栄養を取られて枝葉が成長しないため次の年、実がつかなくなることが多くなります。これを防ぐために、房州びわでは2回に分けて着花(果)制限を行います。その1回目が花もぎと言われる作業です。花もぎは摘蕾と摘花に分けられます。摘蕾とは花、あるいは蕾の1かたまりを丸ごと取ってしまうことです。葉の量に対して花の数が多すぎる場合や、花が着いた位置が悪い場合(例えば、直射日光がたえず当たる位置では生理障害が出やすくなります)、蕾、あるいは花全体をとって、着花数を調節します。また、摘蕾をした箇所からは新しい枝(果痕枝)が分岐するため、小さいびわの木では枝つきを充実させるため、全ての花を落としてしまいます。これに対して、摘花は、左の写真のように花の塊の先端付近をとる作業です。いくつ残すかは品種によっても異なりますが、枝のような部分を2本程度残すのが普通で、1本残す場合や3本残す場合もあります。九州の産地ではもっと多く残すこともあるそうです。この摘蕾と摘花をまとめて花もぎと呼んでいて、1時期に両方の作業を行うことが多いです。行う時期は11月~12月ころです。

摘果、袋かけ
袋かけ直後のびわ
袋かけ直後のびわ posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
 摘果とは、果実が小さいうちに実の数を少なくし、樹の負担を少なくすることによって残された果実の発育をよくする作業で、びわ以外の多くの農作物でも行われています。房州びわの場合、3~4月に、1個か2個の大きく成長している果実を残し、残った実に袋をかけます。果実の数を少なくすることにより、少ない果実に栄養が集まり、大きいびわが収穫できるようになります。庭などに植えてあるびわの樹に小さいびわしかできないのは、品種の問題もありますが、この摘果を行っていないことが最も大きな原因です。また、袋をかけることにより、カメムシなどに果実が指されたり、風で果実が葉とこすれて実が傷んでしまうことを防ぎます。びわは果実がやわらかく、葉が硬い植物なので、この袋かけをやらないときれいなびわはまずできません。また、この袋には紫外線を適度に遮る効果があり、日焼け等の生理障害を防ぐのに役立っています。また、ビニールハウスと同じ原理で袋の中の温度が上がりやすくなるため、果実の色づきを早めるはたらきもあります。

接ぎ木
房州びわの接ぎ木の発芽
房州びわの接ぎ木の発芽 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
 現在、ほとんど全てのびわの苗木は接ぎ木されたものです。種を植えて育てたものは品種のばらつきが大きいため、何年もかかって育てたびわが、実を収穫してみたらおいしくなかった、ということがあり得ます。接ぎ木をすると親と同じ性質をもつものが育つため、大きくおいしい実がなる樹から穂木をとり、接ぎ木をします。したがって、びわの木は地下部分の品種と地上部分の品種が違うことになります。台木としては2~3年たったびわの木が使われます。台木を育てるときに、ごまいろはんてん病に注意が必要です。葉に斑点ができる病気で、発生すると周囲に広がるのが早く、被害が大きくなります。雨除けをして育てるとこの病気を防ぐことができます。もし、葉に斑点ができ、その斑点が周囲のびわにも広がっていくようだったら、そのような葉を全て取り、新しい葉が出てくるのを待ちます。2月ごろが接ぎ木に適している時期です。地面から10cmくらいの位置を横に切ります。そしてよく切れるナイフなどで緑の形成層を上部から3cmほど切れ込みを入れます。穂木は3芽くらいつけて7~8cmにそろえ、基部を3cmほど削ります。基部から1cmくらいの反対側から45°くらいで切り落とします。これを台木の切れ込みに入れ、形成層が合うようにして接ぎ木テープで固定します。穂木が乾燥してしまうと活着が悪くなるので、水につけたり、切り口をなめたりして乾燥を防ぎます。水やりをしっかりやると、1~2カ月で下の写真のような芽が出てきます。5か月くらいして芽が出ることもあるので、気長に見守ってください。初めてやった時は成功率50%くらいでした。

植え付け
びわの苗木の植え付け後1
びわの苗木の植え付け後1 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
 2月に、成長した苗木を植え付けます。盛り土をして植え付け、周囲を肥料の袋で囲います。これは必要ないところもあるかもしれませんが、イノシシに倒されたり、ウサギに芽をかじられたりするのを防ぐためです。びわの樹は水はけが悪いと根を張りにくいので、暗渠排水を掘ったりします。夏は草がすぐに生えてくるので、草刈りをまめに行います。また、ある程度枝が太くなったら、枝が横を向くよう、少しずつ誘引します。左の写真のびわの苗木は縦に枝が伸びすぎている感じです。もう少し枝がしっかりしたら、少しずつ横方向に誘引していきます。

 この他の作業としては、防風林や排水溝の整備やキクイムシ退治などがあります。防風林はだいたいビワよりも高くなりがちなので、込んだ枝を切って日照を確保します。キクイムシはカミキリムシの幼虫で、幹に侵入し、内部を食害します。放っておくと折れやすい枝になってしまい、木に登った時に危険なので、食いカスを見つけ次第、退治します。枝が食害された場所からはがんしゅ病が出ることもあるので、病気の予防の面からも、キクイムシ退治は大事です。また、モンシロシャチホコの幼虫が木につくと、集団で葉を食いつくすため、これも見つけ次第、退治します。ミノムシは葉の先端付近にぶら下がっていることが多いです。葉、果実を食害します。シャクトリムシも果実を食害します。また、がんしゅ病が発生した箇所が見つかった場合は、その表面を少し削り、殺菌します。
カミキリムシの幼虫の被害
カミキリムシの幼虫の被害 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
びわの葉とミノムシ
びわの葉とミノムシ posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
シャクトリムシの被害
シャクトリムシの被害 posted by (C)房州びわと山の幸 福原農園
このページの内容は、「房州びわと山の幸 福原農園」内の「房州びわの歴史と栽培方法」のページで、より詳しく紹介しています。
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